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名古屋家庭裁判所 平成元年(家)680号 審判

申立人 小田勉

事件本人 小田奈美 外2名

主文

本件申立てを却下する。

理由

第一本件申立ての趣旨および実情の要旨

申立人は、「事件本人小田奈美を申立人の特別養子とする」旨の審判を求め、その実情の要旨として、「申立人は、昭和62年11月24日事件本人の母と婚姻し、翌25日事件本人と養子縁組をした。以後、申立人と事件本人の母は事件本人を養育監護して現在に至っている。一方、事件本人の父はその性行などに問題があり、その存在が事件本人の将来に及ぼす影響が大きいので、本件申立てに及んだ」と述べた。

第二当裁判所の判断

申立人に対する審問の結果、当庁家庭裁判所調査官作成の調査報告書その他本件記録によれば、以下の各事実を認めることができる。

1  事件本人は、その父母の長女として出生したが、その父母の間には、事件本人のほか、長男(昭和50年8月13日生)、二男(昭和52年2月18日生)がある。

2  事件本人の父母は昭和59年1月24日調停離婚し、事件本人の母が親権者として事件本人を含む三子の監護養育にあたることとなった。

3  事件本人の父はその後再婚し、その間に長男をもうけている。なお、同人は前科を有し、現在恐喝未遂罪で服役中である。

また、同人は本件制度の趣旨を弁え、特別養子縁組に同意している。

4  事件本人の母は昭和62年11月24日申立人と婚姻し、その翌日申立人と事件本人を含む三子との間に養子縁組がなされた。以後事件本人らは申立人および事件本人の母に監護養育されて現在に至っている。

5  申立人は海技大学校を卒業後船員(航海士)として外国航路に就航するタンカー等に乗務しており、その収入は一家の生活を支えるのに十分である。事件本人の母は専業主婦として事件本人らの養育に専念している。居住環境にも問題はない。申立人と事件本人の母との関係は円満であり、ともに事件本人らの養育に関して十分な愛情と能力を有するものと認められる。また、事件本人は申立人を実父と思い、よくなつき、順調に成育している。

前示認定にかかる事実に照らすと、事件本人は、その兄達とともに、現に申立人と事件本人の母の暖い庇護の下で、平穏な生活を過ごしているものということができる。事件本人の監護養育が特に困難であるとか、不適当な状況にあるということはできず、要保護性は認められない。

たしかに事件本人の父の性行等を考慮すると、事件本人は女児でもあり、その父との関係を断っておきたいとの申立人の心情が分からないでもない。しかしながら、事件本人の父が事件本人に働きかけるとの危惧については具体的な根拠はなく、前示のとおり事件本人に要保護性が認められない本件にあっては、この点を深く考慮することは相当ではない。本件記録を精査しても前示認定を左右するに足りる事実は見出し難い。

よって、参与員○○の意見を聞き、主文のとおり審判する。

(家事審判官 岩野壽雄)

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